宇野と権田のオッさんに出会い、世田谷区で概念体と戦い、地獄の訓練と悪夢の苦痛を味わい、市ヶ谷記念館をババアと原住民と一緒に見に行った激動のあの日から、三日経った。

彡(゚)(゚)「オラァ死に晒せやぁぁぁ!!」

(´・ω・`)「し、死にたくない! 死にたくない!」

宇野「なんJ民! 自分より弱くて小さい相手になにをそんな手こずってる! さっさと一発当てて楽にしてやれ! 動きが大雑把過ぎるぞもっと的を小さく絞れ!」

宇野「原住民! もっと気合入れて避けろ! 最小限の動きで避ける見切りなんて戦場じゃ役に立たんぞ! お前は一発でも攻撃をくらえばお終いなんだ! 不必要なぐらい大げさに避けろ!」

彡(゚)(゚)&(´・ω・`)「ぁぁぁあああああああ!!!」

〜〜
彡(゚)(゚)「ゼェ...コヒュー...ゼェ...コヒュー...」

(´・ω・`)「つらたん......つらタンク......」

宇野「大分動きはマシになったと思います。あと10分休憩したら、次はまた組み手の練習から始めましょう」

彡(゚)(゚)「ゼェ...コヒュー...ゼェ...コヒュー......コッ、ゴブフォッ!!」

慌ただしかった初日の次の日から、今日までの三日間。ババアが研究室に篭っている間、ワイらはずっと訓練を受けていた。練習内容は、型の基礎と、組み手と、実戦形式の戦闘訓練の繰り返しだ。

(´・ω・`)「初日の、筋トレよりかは、確かにマシだけど、それでも、辛いものは辛いね」

ワイが糞の掃き溜めのような汚れ仕事をさせられた時に、原住民はずっと宇野による筋トレを続けていたらしい。ワイの比ではないだろうが、原住民も相応の苦痛は経験済みなのだろう。

宇野「辛くて当たり前です。三日前の地獄は、これからの苦痛に『耐える』為であって、苦痛を『感じなくなる』為のものではありません。苦痛を感じないということは、そいつは心が壊れているということです。そんなイカれを、戦いの場で頼りにすることなど出来ません」

宇野「心技体のうち、私があなた方に教えられるのは技だけです。体を強くしたいなら、博士になんとかしてもらってください。心を強くしたいなら、強くなる為の何かを、自分で見つけてください」

技や体と違って、心は、他人が無理矢理どうこう出来るものじゃないので。と、宇野は言葉を続けた。

彡(゚)(゚) (......強くなる為の何か、か)

coat博士「失礼するぞ、邪魔しに来たぞ。追い返されても居座るぞ」

ワイの呼吸がようやく元に戻ってきた頃に、ババアが部屋に入ってきた。ボサボサの髪にクマの出来た目元を携えて、ダルそうな低いテンションだ。

(´・ω・`)「わーい。博士が来たよ、休めるよ」

彡(゚)(゚)「ババアは話が長いから助かるわ」

宇野「黙りなさい軟弱者ども。それで、何の御用ですか?」

coat博士「ああ。概念体について、新たな説明と訂正をしにきた」

宇野「説明?」

coat博士「訂正だな。以前話した、概念体の能力を決める計算式は覚えているか?」

彡(゚)(゚)「『ステータス』と、」

(´・ω・`)「『知名度』のかけ算、だったね」

coat博士「正解だ。だがその計算式にはもう少し、説明を付け加えるべき要素があった。分かりやすくする為に、説明には例え話を使おう」

coat博士「『ステータス』を器に、そして『知名度』を水に置き換えて考えてみてくれ。器が大きければ大きい程、水が入るスペースは増えるよな。しかしここで、肝心の水が少ししか無かったらどうなる?」

彡(゚)(゚)「まぁ、デカい器を用意した意味はないわな。水が少ししか無いなら、器もちっこいので十分や」

coat博士「正解だ。では今度は逆に、水はたくさんあるのに、器が小さかった場合を考えてみよう。小さい器に、このたくさんの水を注いだらどうなる?」

(´・ω・`)「器からはみ出て、こぼれちゃうだけだよ。せっかくのお水がもったいないね」

coat博士「正解だ。つまり器(ステータス)だけ大きくても、水(知名度)だけ多くても仕方が無い。両者がバランス良く伴っていなければ、力は十全に発揮出来ん」

宇野「......説明は分かりやすくなりましたが、言っている事は以前と何も変わってないですね」

coat博士「まぁ、まぁ。本題はこれからだ。......私は、君ら概念体のステータスを増やすことも、知名度を高めてやることも出来ん」

coat博士「だが、今ある器の形を変えたり、一部を削って、新たな小さい器を作ることなら出来る。全体に均等に配分された君らの能力を、ある一点に集中させる......つまり、武器を生み出すということだ」

彡(゚)(゚)「武器?」

(´・ω・`)「集中させる?」

coat博士「例を挙げよう。宇野くんの話によれば、KBSトリオの黒い奴......仮にSと呼ぼうか。Sは他のK、Bとほとんど同じスペックであったにも関わらず、右拳には驚異的な威力を感じたという」

coat博士「理由は単純で、ネット上にSがそういう能力を持っている、という概念が存在しているからだ。Sの能力の名前は『其為右手(イマジンブレイカー)』といって、あらゆる敵の異能を打ち破るらしい」

彡(゚)(゚)「イマジンブレイカーって......お前そりゃ、あれやないか」

coat博士「若者の間で人気のとあるライトノベルの能力らしいが、Sの淫夢ビデオ内での発言と似ている点があってな。それを面白がった淫夢民がでっち上げた、悪ふざけの産物だ」

coat博士「故に、『Sの右手には特別な力がある』という概念が生まれた。そしてSは、右手にのみ突出した力、すなわち武器を手に入れたというわけだ」

coat博士「お前らが遭遇したMURの、肉塊の群れを産む能力も、同じく淫夢民の悪ふざけの賜物だな。あれはMUR肉と呼ばれる、MURの体の様々な部位を繋ぎ合わせて出来た化物だ。その珍妙な姿がウケた為か、淫夢民の間では結構な知名度があるらしい」

coat博士「このように、敵にはその知名度に合わせた個性、武器が備わっている。一方こちらは、何の特性も持ち合わせていない、いわばプレーンの状態なわけだ」

彡(゚)(゚)「ゴチャゴチャ言われたが、ようはワイらをパワーアップさせよう、って話やろ?」

coat博士「目的と結果はその通りだが、これからするのは、厳密に言えば改造だな」

coat博士「お前の体が、仮に戦闘力600だとしよう。その戦闘力を頭部、胴体、両脚両腕の6つの部位に、100ずつ均等に振り分けた状態が今のお前だと考えてくれていい」

彡(゚)(゚)「ふむ」

coat博士「今のお前の全身はバランスが良く、どこを叩かれても、攻撃力99のダメージまでならいくらでも耐えられる」

coat博士「だが相手の攻撃力が200だった場合、お前はその攻撃を耐えることも、弾くことも出来ん。抵抗することもままならん」

(´・ω・`)「そんなの、それこそステータスが強いかどうかの話じゃない。僕らにはどうしようもないよ」

coat博士「だからこそ我々も、そのステータスに偏りをつくろうとしているのさ。私はお前らに更なる力を授けることは出来ん。だが今ある600の戦闘力を、Sのように右手に300、あとの残りを全身に振り分けることは可能だ」

彡(゚)(゚)「パワポケの野手のステータスがCCCCCなのよりも、AACEEの方が使い易くて楽しい、みたいな感じか?」

coat博士「そういうことだ。戦闘であれ、戦術であれ、戦略であれ、何事も突出した偏り(武器)があった方が有利だ、ということだ」

(´・ω・`)「そうと決まれば早速始めようよ!僕、早く強くなりたい!」

彡(゚)(゚)「せやせや! なんでもいいから早よう武器よこせ! なるだけカッコいいの!」

宇野「......まだ今日の訓練は終わっていませんよ?」

彡(゚)(゚)「そんなもん後回しに決まっとるやろ!」

coat博士「いや、改造はお前らが眠っている時に行わせてもらう。くたびれてとっとと眠ってもらった方が都合がいいので、むしろいつもより厳しくしてやってくれ」

宇野「了解です」

彡(゚)(゚)「ファッ!?」

(´・ω・`)「今日はもう終わりの流れだと思ったのに!」

coat博士「強くなりたいんだろう? なら鍛錬は怠るな。せっかく良い指導者がいるんだから、お前らはむしろもっと積極的に励め」


coat博士「何かを得るには代償が必要だ。その点、汗水垂らすだけで済む鍛錬は、強さを得る代償としては非常にリーズナブルだからな」