夜。一通り訓練を終えた私達は、権田さんの車に乗り、coat博士の研究所へと向かった。

権田「皆様方には大変なご迷惑をおかけしたようで、申し訳ございません」

人間へと復帰した権田さんは、開口一番謝罪を口にした。

宇野「いえ、今回の件は私の落ち度です。権田さんが謝る必要はありません。......前の車も、私が壊してしまったんですから」

前の車が駄目になったのは、MURに追いかけられた時だ。肉塊共の二回の体当たりによって、前席左側と後部座席右側のドアに、大きな凹みが生じていた。また、車の屋根やバックドアにも小さな凹みが数個あり、側面には擦り傷やぶつけた後があちこちに付いていた。

権田「いえいえ、修理すれば充分治りますから、それこそお気になさらないでください」

彡(゚)(゚)「......ワイ、あの車気に入ってたんやけどな」

権田「すぐに修理して、またあの車で運転させていただきます。しばらくは、この車でご辛抱ください」

彡(゚)(゚)「......。.........そか」

なんJ民の権田さんへの態度は固い。訓練の疲れもあるのだろうが、性交渉を強要させられた相手、という負の情が根強いのだろう。

彡(゚)(゚)「まぁ、早うしてくれや」

しかしなんJ民が罵倒を口にすることは無かった。彼にも、権田さんに罪はないことが分かっているのだろうか。だとすると、感情のおもむくままに暴言を吐き散らしていた頃と比べれば、大した成長ぶりだ。

宇野(私の指導のおかげかな)

成長に繋がる出来事に、特に心当たりは無い。ならばきっと、積み重ねた鍛錬が、彼の心を強くしたのだろう。それはつまり、私の手柄だということだ。感謝してほしい。

権田「そろそろ着きますよ」

(´・ω・`)「うー、久しぶりの我が家だー」

『私有地につき立ち入り禁止』と書かれた看板を越え、山道に入ってしばらくすると、三日ぶりに目にする研究所に到着した。

権田「私はここで待機しています。何か御用がございましたら、いつでもお申し付けください」

駐車場に一人残った権田を置いて、私達は建物の中に入る。

coat博士「こっちだ、ついて来い」

coat博士に促されるまま歩くと、連れてこられたのは地下室であった。
以前顔を出した時には見せてもらえなかったが、最先端技術の研究室というのには、実のところ少し興味があった。期待を胸に秘めながら階段を降り、室内を視界に納める。すると、

宇野「......はぁ?」

眼前に広がった光景は、予想外のものだった。研究室は薄暗く、狭さを感じさせる。実際はかなり広々とした間取りなのだろうが、その四方を埋め尽くすように、旧時代の大型電算機や、使用意図の分からない何かの機械がズラリと並んでいて、スペースを圧迫していた。
ピコピコと音を鳴らしながら赤や青に点滅する、いかにも70年代のSF映画に登場しそうな謎の機械群は、いっそ見るものをバカにしているようにさえ思えた。

宇野「なんですか、この......イメージ通りというか、あまりにチープな施設は」

明らかに、現代の科学技術に即した部屋ではなかった。まさかこんな、電卓や8ビットが持て囃されていた時代の遺物で、概念体を生み出したとでも言うつもりなのだろうか。

coat博士「それっぽいだろ? ここは趣味で搔き集めたアンティーク(時代遅れのコンピュータ)部屋でな。本当の実験室はこの更に奥の部屋だ」

宇野「何故、わざわざこんな部屋を?」

coat博士「本命の実験室のカモフラージュ......って意味もあるにはあるが、まぁただの私の趣味さ。特にすることが無い時は、実験室よりこっちの趣味部屋にいることの方が多いな」

coat博士「都市の機能としてはビル群の方が優れてはいても、観光地としては、昔の面影を残した場所の方が魅力的だろ? それと同じで、最先端の機材は研究に必須ではあるが、画一的で情緒が無いからな。休む時ぐらい、懐古主義のノスタルジーに囲まれていたいのさ、私は」

彡(゚)(゚)「ワイらもたまに、ここでファミコンやらスペースインベーダーとかで遊んどるぞ」

(´・ω・`)「すること無さ過ぎる時だけにね。ここ、PSもwiiも置いてないから」

彡(゚)(゚)「ホンマは新しいゲーム機で遊びたいんやが、ババアが置いてくれへんのや」

coat博士「買いたきゃ自分で買え。最先端の現代機器なんぞ、私の趣味部屋に置いてたまるか。昔ながらの情緒や風情がぶち壊しになっちまうだろ」

宇野「......新技術を発明した科学者の言葉とは、とても思えませんね」

coat博士「趣味と仕事は別物なんでね。......それでは、今度は私の仕事部屋をお見せしようか」

そう言うと博士は、壁に貼り付けられた暗証キーに番号を入力し、下部の指紋認証に人差し指をかざした。すると、部屋の最奥部にあった本棚がズルズルと横に移動し、新たな部屋が姿を現した。

宇野「またこんな、ベタな仕掛けを......」

coat博士「そんな呆れた顔をするなよ。言っとくが、私の学会の知り合いの部屋は、皆これよりもっと個性的だぞ?」

宇野「あなたの学会にはアホしかいないんですか」

coat博士「ちゃんと成果を上げてきた奴らなんだがな......。まぁ、科学者に『なる』には物覚えの良い頭がなけりゃ話にならんが、そっから科学者が『成る』のには、独自性や遊び心を忘れん柔軟な頭が必要ってことさ」

いいから早く入ってみてくれ、と促され、実験室に足を運ぶ。
実験室は、薄暗かった趣味部屋から打って変わり、屋上に散りばめられた電灯に白く照らされていた。手前には、大量の資料が積まれたデスクや、私には理解の及ばない何かの機械が置いてある。奥にはスパコンが幾数台と立ち並び、最先端の研究に相応しい意匠を誇っていた。
中でも目を惹くのが、研究室の中央にドンと構えた、二台の装置であった。

彡(゚)(゚)「ここに来るのも久しぶりやな」

(´・ω・`)「久しぶりというか、僕らが生まれた時と今日とで2度目だね、ここに来るのは」

宇野「生まれたというのは、やはりこの装置でですか?」

(´・ω・`)「うん。僕ら、気付いたらこの中に横たわってて、起きたら博士が目の前にいた」

彡(゚)(゚)「生まれた直後のことなんてボンヤリとしか覚えてないけどな」

縦3m、横と高さが幅1mのその装置は、私に棺桶を連想させた。装置に繋がる幾つものパイプが無ければ、私がこれを装置と分かる術も無かっただろう。

coat博士「お察しの通り、この二台の装置が『概念を実体化する技術』の要であり肝だ。こいつらはここで生まれ、ここで強化される」

彡(゚)(゚)「なんでもいいから早く寝かせてくれや」

coat博士「だったら早く装置の中に入れ」

(´・ω・`)「じゃあ早く外の電気消してよ。眩しくて眠れないよ」

coat博士「中に入れば気にならんから大丈夫だよ」

そう言われ、二人は装置の中に入っていく。

coat博士「......さて、これで後は、こいつらが寝るまで待つだけだ。宇野くんも今日は休んでくれていいぞ。寝泊まりは、二階のリビングに来客用の部屋があるから、そこを好きに使ってくれ。私の趣味ではあるが、映画もそこそこ揃ってる」

明日の朝になったら、また趣味部屋に来てくれ。その博士の言葉を最後に、今日の私の仕事は終わった。

〜〜〜
夜が明ける少し前。しばしの眠りから覚めた私は、coat博士の実験室へと向かった。趣味部屋から声をかけると、中から操作したのだろう。本棚が移動し、私は再び実験室へと招き入れられた。

coat博士「早かったな。昨夜は、私の用意した映画は観ずに寝たのかい?」

宇野「いえ、『蠅男の恐怖』を視聴させていただきましたよ。展開が支離滅裂で良い映画とは言えませんが、名作です」

coat博士「......私のコレクションはSFがほとんどだが、君は数ある中から何故それを選んだんだ?」

宇野「なんででしょうね。ここの、薄暗い地下の研究室を見たせいかも知れません。タイトルを見たら無性に観たくなってしまいまして、おかげで寝不足です」

coat博士「そうか、別に急いで来る必要はなかったんだがな。まだこいつらも寝ているし」

宇野「それです。昨日は聞きそびれてしまいましたが、何故、彼らがわざわざ眠るのを待っていたんですか? 身体の改造には痛みが伴う、といった理由からですか?」

coat博士「痛み、ではない。こいつらを気遣っているのはその通りだが、理由はより重大なものでな。ようは※スワンプマン......いや、どこでもドアの怖い話に近いな」

※スワンプマン(泥男)......同一性やアイデンティティーについて問う為の思考実験。
[ある日、一人で散歩をしていた男Aが、沼の側で落雷により死んだ。しかしこの時、落雷と沼の泥が奇跡的な化学反応を起こし、死んだ男Aと全く同一同質、同じ記憶を持つ泥男A'が生まれた。そして散歩から帰ってきたA'がAであると、職場の人間や家族は、疑うことさえ無く受け入れた。A'は明日も明後日も、Aとしての生活を続けていく。
しかし、A'は決してAでは無い。落雷によって死んだ本物のAの亡骸は、今も沼の傍らで横たわったままである]


宇野「どこでもドア......あの身体が分子レベルでバラバラになるって奴ですか」

coat博士「そうだ。どこでもドアで空間をくぐる際、のび太くんの体は、一度バラバラになった後で、記憶や肉体を行き先の空間にそっくりそのまま再構成されているのでは? という説だ」

coat博士「どこでもドアの話の肝は、スワンプマンと違い、元の人間が必ずしも死んでいるわけではない、という点だ。スワンプマンの場合、AからA'へという、死んだはずのAと全く同じ体格人格でありながら、その実全く別の人間であるという恐怖がある」

coat博士「ではどこでもドアの怖い話のどこに、人は恐怖は覚えるのかな?」

宇野「それは、まぁ、身体がバラバラになる点でしょう。のび太くんが無邪気な顔でそんな恐ろしい体験を、しかも知らず知らずの内に何度も味わっているのか、という不気味さもあります」

coat博士「そうだな。しかし本人が死んでしまうスワンプマンと違って、どこでもドアの話は、本人が知らなければどうということは無い。私の作った『概念を実体化する技術』の装置も同様だ」

coat博士「どこでもドアも私の装置も、記憶の断続性や人格の同一性はクリアしている。しかし一度『自分は一度バラバラになった』と知ってしまえば、もう頭からこびりついて離れることはない。必ず『今の俺はバラバラになる前の俺と、本当に同じ人間なのか?』と、答えの無い思考にハマってしまう」

coat博士「すなわち、自我の危機が訪れてしまうんだ。こいつらをそんな危険に晒すわけにもいかんので、眠って意識が消えるまで待っていたわけだ。繰り返すが、知らなければどうということの無い話だからな」

宇野「バラバラになった彼らは、本当に記憶の断続性や人格の同一性はクリアしているんですか?」

coat博士「人間と違って、こいつらの意識の源流は、脳や肉体ではなくデータの中にある。今私がやっているのは、頭から脳みそ取り出して弄った後、元の頭にすっぽり収めるようなもんだ。まず間違いなく同じだよ」

それにしてもだ、と、博士は言葉を続ける。

coat博士「KBSトリオの存在と、MURの能力の話を聞いて、私は正直凹んだよ。KBSトリオ如きがいるということは、間違いなく他にも仲間がいる、ということだ。しかもSやMURの例からみて、向こうは能力の付与についてさほど苦労していないらしい」

coat博士「技術を作った私でさえ、生み出せた概念体は野獣を含めた3体だけだ。あちらは我々と比べて、随分と技術が進んでいるらしい」


〜ガン掘リア宮殿〜

戦う準備が整いました、という始まりのホモの言葉を受け、野獣は立ち上がった。
夜明け間近のガン掘リア宮殿にて、野獣と始まりのホモは、全ての仲間を外庭に集めた。集まった仲間達の顔には、それぞれ期待の色が浮かんでいる。
その数は数十名にも昇り、熱帯夜の暑さと密集による熱気とが、彼らの高揚をさらに高める。彼らは明らかに、解放の時を今か今かと待ちわびていた。
彼らの様子を確認してから、野獣と始まりのホモはこの時の為に用意された壇上に昇った。ひとしきり注目が集まるのを待った後、野獣は口を開いた。

野獣「随分と待たせてしまったが、タメの時間は今日で終わりだ。これからお前達には、世田谷区全土に散って、我々の勢力を拡大させてもらいたい」

野獣「難しいことは言わん。ルールや制限など設けない。お前らはただ、本能のままに暴れ、望むままに犯せ。好みの男を、好きな時に、好きなだけレイプしてやれ! それこそが、俺達を追い詰めた奴らへの復讐となり、俺達の理想郷を創り上げる手段となる!」

野獣「自分を偽るな! 性癖を隠すな! 生まれ持った本能を愛してやろう!俺達はそれに値する程の苦痛を味わってきた! 俺達はそれを可能にする力を手に入れた!!」

野獣「勃ちあがれ同胞よ! 今この時より、解放の宴を始めよう!!」

野獣の声を受け、仲間達は盛大な歓声を上げた。歓声はやがて雄叫びに、最後には狂喜の絶叫へと色が変わっていった。
彼らの興奮は当然である。なにせ、絶対的リーダーからついに許可が出たのだ。『犯していい』と、『好きなように暴れていい』と、『好きな奴を好きなだけレイプしていい』と。

性欲を抱えた男なら、誰でも一度は夢想する。
人権も道徳も、人目も社会的立場も、法律も警察もお構い無しに。街を歩く自らの性的対象を、手当たり次第に犯してみたいと。ハーレムをつくってみたいと。性奴隷が欲しいと。心も身体も拘束して、ソイツの全てを思うがままに支配してみたいと。

男の欲望の一つの頂点が、今まさに叶おうとしているのだ。彼らの顔にはもう、理性などほとんど残ってはいない。

野獣「さぁ行け野郎共! 暁の地平線に精子をかけてやれ!!」

「「ウォォォォォォォーーーッ!!!!」

野獣の最後の言葉を皮切りに、彼らは雄叫びをあげ、始まりのホモに定められた持ち場へと走っていった。

始まりのホモに振り分けられた、世田谷区での彼らの持ち場は、次の通りである。
『ガン掘リア宮殿(本拠地)......野獣先輩、KMR、MUR、始まりのホモ(テロリストの勧誘の為一時離脱)

北沢地域(半ば制圧済み)......ピンキー姉貴、一転攻勢(シャブラサレータ)、ホリ・トオル、KBSトリオ

世田谷地域......MNR、TNOK、イニ義893、SNJ、DB

玉川地域......KBTIT、平野源五郎、虐待おじさん、ひで

砧地域......AKYS、まひろ、じゅんぺい、我修院、中野くん、関西クレーマー

鳥山地域......GO 』

これらの枠のどこかに、その他の概念体が浮動で散る。そして、

始まりのホモ「さぁお前らも早く行け、この役立たず共」

??「「了解です! はじめくん様!!」」

今日の為に準備した、例の『ホモガキ達』約100名も、彼の命令と共に散っていった。彼らは、KBTITやAKYSといった主だった概念体の、手下としての役割が与えられている。いわば、仮面ライダーにおけるショッカーだ。

始まりのホモ「......さて、では僕もそろそろ出かけますかね」

野獣先輩「本当に必要なんですか? その、参謀役のテロリストというのは」

始まりのホモ「勿論です。世田谷区の制圧は、僕らの目的の第一段階に過ぎません。次のステップの為には、軍略の知恵がどうしても必要になります」

野獣先輩「......それに、あの『ホモガキ達』は使い物になるんですか?」

始まりのホモ「どうですかね。coat博士が寄越してくる刺客には無力でしょうが、少なくとも一般人が相手なら無敵でしょう」

始まりのホモ「なにせ『ホモガキ達』は、僕が邪道に邪道を重ねて創り上げた......曲がりなりにもれっきとした、『概念体』ですからね」



〜同時刻 coat研究所 地下実験室〜

朝。目が覚めたワイと原住民は、寝起き早々ババアに文句を垂れていた。

彡(゚)(゚)「なーんも変わっとらんやんか。失敗したんかババア」

(´・ω・`)「見た目も感覚も昨日と全く同じだね」

coat博士「いや、お前らの改造はちゃんと成功したよ。今の状態は精通したばかりの小学生みたいなもんだ。やり方さえ覚えれば、すぐにおっ勃つようになる」

彡(゚)(゚)「唐突に下ネタぶっこむのやめーや」

coat博士「よし、ではまず原住民からだ。パッと頭に浮かんだ言葉を叫んで、何かを出そうとしてみろ」

(´・ω・`)「ええっ! 急に言われても分かんないよ、何かってなに?」

coat博士「なんでもいいさ。インスピレーションに任せて唱えれば、必ずお前の武器を出せる」

(´・ω・`)「い、インスピレーション? ええと...ええと......」

彡(゚)(゚)「はよせえや、時間かければかける程どんどん場が白けるぞ。こういうのはノリと勢いが命や」

宇野「宴会の無茶振りみたいなこと言わないでください。追い詰めてどうするんですか」

(´・ω・`)「うぅ......う!」

(´・ω・`)「わ、“わたすはJの守り神”!!」

CORPORATION “炸裂のきゅうり神”

彡(゚)(゚)「なんちゅうかけ声やねん」

(´・ω・`)「わ! なんか出てきた! 右手になんか出てきて......ってなんできゅうり神様が!?」

原住民が驚きの声をあげる。その手には確かにきゅうりが握られているが、先端部が顔の形に掘られている点を除けば、見た目はただのきゅうりでしかなかった。

彡(゚)(゚)「なんや、武器どころかロクに栄養にもならんもんが出てきたぞ」

(´・ω・`)「きゅうり神様の前でなんて失礼なこと言うんだよ! きゅうり神様に謝ってよ!」

彡(゚)(゚)「あーん? 何がきゅうり神や。こんな顔が彫ってあるだけの安物、いつまでも有難がっとるんやないで」

ワイは原住民の手からきゅうりをひったくり、

(´・ω・`)「あっ!」

彡(^)(^)「偶像崇拝はパクーで」

顔っぽいきゅうりの先端部を、思い切り齧ってやった。すると、水気ばかりで味の薄いきゅうりの破片が口内に弾け......、

(´・ω・`)「ああっ! きゅうり神様が!」

彡( )( )「ホゲッ......」

きゅうりが、炸裂した。突然バラバラに弾け飛んだ無数の破片が、きゅうりを握った右手へ、顔へ、そしてワイの口内全域へと襲いかかった。

彡(×)(゚)「ハッ、カハッ、ハガガ」

右手と顔は、まだ凄く痛い程度で済んだ。が、口内は剥き出しの歯と歯茎と唇とを満遍なく攻撃され、死にたくなる程の激痛が襲った。

(´・ω・`)「うわぁ、おにいちゃん大丈夫!?」

彡(×)(゚)「カ、ハカカ、カハバ(大丈夫なわけないやろ殺すぞ)」

coat博士「おい、今のきゅうりはまだ出せるか?」

(´・ω・`)「え? う、うん。僕、きゅうり神様ならいくらでも出せそうな気がするよ。ホラ」

coat博士「右手と左手に一つずつ......量産も可能か。いいぞ、これなら原住民の身体が弱くても、敵に投擲しながら離れて戦える。今みたいに罠のような使い方も出来るだろう。サポート向きの良い武器だ」

宇野「罠には、向いてないんじゃないですか? さっきのも今のきゅうりにも、何か不気味な顔が彫ってありますし。差し出されてもまず口にはしませんよ」

(´・ω・`)「だから、きゅうり神様を馬鹿にしないでってば」

宇野「あ......いえ、あなたの神を否定しているわけではないですよ。気安く他人様の神を侮辱した奴の末路は、総じてああなりますからね」

coat博士「うむ。因果応報という奴だな」

彡(×)(゚)「お、ら、ち、しろ(お前らちょっとはワイの心配しろや)」

(´・ω・`)「ごめんおにいちゃん......実はさっき、ちょっとだけね」

(´^ω^ `)「きゅうり神様が爆発した時、心がスカッとしちゃった!」

彡(゚)(゚)「お前、あとで、ほんと、覚えとけよ」

coat博士「お、もう回復したか。早いな」

彡(゚)(゚)「うるせぇ、いいから次いくぞ。今度はワイの番やろババア」

coat博士「そうだな。いいか、パッと頭に浮かんだ言葉を唱えるんだぞ。これは一種の暗示でな、ファンタジーの呪文詠唱なんかも......」

彡(゚)(゚)「ようはオナニー用に、一番好みのエロ本用意しろってこったろ? 話が長いんやババア」

coat博士「むっ、親に対してなんて口の利き方だ貴様」

彡(゚)(゚)「うっせババア。......頭に思い浮かぶ言葉、ねぇ。今はこれしか出てこんわ。“ワイは嫌な思いしてないから”」

CORPORATION “蛮族の棍棒”

宇野「なんですかその、自分勝手極まりないクズ発言は」

彡(゚)(゚)「ふんっ、孤独に荒んだワイの心にはこの言葉がお似合いなんや......おっ?」

気付くと、ワイの右手に、茶色の棍棒が収まっていた。ゴツゴツとした窪みやこぶがいくつもあり、良く言えば無骨、率直に言って不細工な見た目だ。

彡(゚)(゚)「なんやこれ。せっかく武器使うならバットが欲しかったんやけど」

coat博士「まぁ、棍棒をより洗練させ、球を打つのに適した形にしたのがバットだしな。未熟者の今のお前には、棍棒ぐらいが丁度いい」

彡(゚)(゚)「なんやとババア」

coat博士「その棍棒が、今のお前の限界ってことだ。悔しけりゃもっと鍛えて、もっと強くなることだな。そうすればいずれお前好みのバットも作ってやれるさ」

coat博士「さぁ、これで戦う準備は整った。敵はそこにあり、目的は明確で、武器も揃えた。後はただ、力の限りに戦い、敵陣を弱らせ、そして大将首を狙うだけだ」

彡(゚)(゚)「大将首?」

coat博士「私が与えた使命を忘れるんじゃないよ。大将首が誰かなんて決まっているだろ」

coat博士「お前の使命はただ一つ、『野獣先輩を倒せ』だ。これからたっぷり親孝行してもらうから、覚悟しろよバカ息子」


【ステータス】
彡(゚)(゚) (なんJ民)
心......知識D 判断力C 精神力D 対人能力E
技......回避C 組手C 間合いC 攻撃手段D
体......腕力B 敏捷性C 持久力D 耐久性B


特殊概念
・蛮族の棍棒
そこそこ硬く、そこそこ重く、当たるとかなり痛い無骨な棍棒。なんJ民自身はバットを使いたがっている為、使用者との相性はあまり良くない。

『総合能力 C』



(´・ω・`) (原住民)
心......知識D 判断力C 精神力C 対人能力B
技......回避B 組手D 間合いE(武装時 B) 攻撃手段E
体......腕力E 敏捷性B 持久力C 耐久性B


特殊概念
・炸裂のきゅうり神
敵に投げつけるも良し、置いて罠にするも良し、食べるのは悪しのきゅうり型炸裂弾。一定以上の圧がかかると爆発し、破片の衝撃によりダメージを与える。が、現時点での火力は少し強めの爆竹程度でしかない。
原住民は、御神像を爆破する冒涜行為への躊躇いと、戦いに貢献したい気持ちとで板挟みになっているという。
きゅうり神の爆発を見届ける彼の表情からは、戦いの虚しさへの哀愁が常に漂っている。