僕たちは、あの時に犯人を逃がしてしまった。
顔も名前も住所もわからなくなってしまったのだ。
何一つ探せる手がかりがなくなってしまった僕たちは、
あの殺人鬼白鳳鳳作の家を調べる他に出来ることがなかった・・・・
 
 
  第六章 父親の執念
 
 
鍬王駅から車で約15分---
鍬王グランドホテルから北へ広がる海岸線には、年間約20万人から30万人の観光客が訪れる。
侍の時代より続く寺・城下町地帯がある
その外れにやつの家はあった。
いや、正確にはやつがかつて白鳳鳳作だったとき住んでいた家だ・・・・・
やつは・・・・今 新しい誰かの顔と
戸籍と
仕事と
帰るべきどこかの家をてにいれたのだ
もう決してここには近づきもしないだろう・・・・・・
でも、僕らはこの家を調べねばならなかった
なぜなら、やつを追う手がかりがこの家を調べる他に全くないのだから・・・・
やつは完全に逃げ切ったのだから・・

康一(あの、大輔くん?
連れ込んで殺した猫の
生首とかえぐりとった肉球とか出てきたらどおする?
殺人鬼ってのはハムのように死体をしまっとくのが趣味らしいよ?)
 
大輔(でないと思いますよ?
あいつはそういう容疑者になるような犯罪の証拠は一切残していないと思います・・・・)
 
大輔(・・・・・・・・・)
 
康一(あ、それってやつのアルバムですか?
これが、子供のとき?
面影あるふうですねー
思い出も過去も捨て去って別の人生を歩むってわけですか・・・・・)
 
大輔(白鳳鳳作
1966年6月6日生まれ
集めたやつの人物像は身長175
体重66
血液型🅰型
両親が年をとってからの子供で
父親鳳廣は、やつが26歳のとき病死
死因はガン・・・・
母親もその後老け込んで死んだそうです
特に両親の死には不思議な点はありません
近所の人の証言によりますととても仲の良い家族だったそうです。)
 
康一(仲の良い家族ですか・・・・)
 
大輔(1988年
K大学文学部卒
同年Y市内のAEONに入社
1993年より鍬王支店勤務で、
前科なし
結婚歴なし
誰とでもトラブルなく接するが、特に親しい友人なし
恋人なし
手術経験なし
右手はやつに戻りましたが、指紋や歯形・手術あとからはやつを見つけるのは不可能ですね)
 
康一(特徴のない情報ですねー
何かやつを見分ける目印みたいなものはないんですか?)
 
大輔(この男は目立たないように目立たないように人生を送って来ています。
見てください
このトロフィーや賞状はすべて三位です。
決してヒーローにはなってません。
しかも、何が特技なのかよくわかりません
スポーツ?
音楽?
作文?
写真も目立たない位置で写ってますね
大学も二流
会社でも目立たない
しかし落ちこぼれでもない
仕事はそつなくこなす
他人からは妬まれずバカにされず
こいつは長所や短所を人前に出さない男なんですね・・・・)
 
大輔(もちろんわざとです
高い知能と能力を隠す・・・・
それが、最もトラブルに巻き込まれなくて、出くわさないということだと知ってます・・・・)
 
大輔(何か、やつの趣味みたいなものとかでも見つかれば良いなと思ってこの家に来たんですが・・・・)
 
康一(趣味ですか?
そういやこいつ引き出しの中に瓶たくさん集めてるんですけどなんですかね?これ)
 
康一(ほら、
中になんか黒いものが入ってますよ・・・それにこの数字はなんだ?1988年ってことかな・・・?)
 
康一(ほんのり匂いますねなんですかねこれ)クンクン
 
大輔(どうやら、毛のようですね
剃った毛を捨てずに瓶の中に溜め込んでいます・・・・)
 
康一(え?)
 
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
 
康一(うわああああっ!
け、毛!?
早く言ってくださいよ!)
 
ボトン
 
カサカサカサカサ

カサ
 
康一(な、なんでこんなにたくさん剃った毛を瓶に集めてるんですかあッ?
な、なんの毛ですか?
ま、まさか・・・・)
 
大輔(いや、これは自分の毛ですね
自分の剃った毛を捨てずに集めてとっておくのが趣味らしいです
引き出しに入ってたノートに毛のデータを全部丁寧に書き込んでます)
 
康一(デ、データって瓶のこの数字ですか?
1988ねんから集めてるってことですか?
10年も前から?)
 
康一(ゲッ!!)
 
そこには、毛の長さなどが細かく記されていた・・・・・
 
康一(1988年の右腕の毛は15cm毛が伸びたってデータですか?
うわっ、次のぺージには、足の毛のデータがのってますよ?)
 
大輔(平凡を装う男の異常な趣味を見つけたってところですね・・・・
見てください、ここを!
なんのためにデータをつけているのか分かりましたよ!)
 
毛が15cm以上のびる年
絶好調‼
誰も僕を止めることはできない。
 
大輔(絶好調‼
誰も僕を止めることはできない。・・
このデータは占いです
ユダヤの人たちは太陽の黒点の動きで商売の好景気、不景気を見るらしいですが、白鳳鳳作は、毛の伸びる長さで自分の体調を占っていたんです。
もちろん・・・殺しの体調をです。)

1989年
今年は6月でもう10cm以上も伸びている
 
康一(1989年って小野寺千鶴さんが殺された年ですよ!
何てやつだ!病気野郎め!)
 
大輔(ですが、これはやつを追える手がかりではないですね・・・・
他にも何かあるかもしれません
探してみましょう)
 
そのとき、ひとりでにインスタントカメラが動いた
 
カシャッ
 
ジイイーーッ
 
 
 
康一(こ、こいつは、今のは、この家の中に・・・・
他に誰かいるってことですか?
このカメラは・・・)
 
大輔(らしいですね
でも康一さん、油断はしないでください)
 
康一(白鳳にまだ仲間がいるってことですか?)
 
大輔(いや、それは絶対にありません
白鳳は一匹狼です
犯罪は人間関係から足がつきます
仲間がチクるってやつです
やつの最も信用しないことです
あんなにやつの事を慕っていた藤島ですら消したんです
それは絶対にないでしょう)
 
大輔(ですが、家の中に何者かがいる
気を引き締めてください)
 
康一(これは・・・・・
大輔くん・・・・今のインスタントカメラ・・・を見てッ!
ぼ、僕たちの背後に、背後に・・・・)
 
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
 
康一(ち・・・・・・父親だッ!
白鳳の父親がっ、・・写ってる‼・・)
 
康一(や、ヤバイよ!
ものすごくヤバイよお!
こ、これは、この屋敷には!
白鳳の死んだ父親がいるってことですか⁉)
 
大輔(小野寺千鶴の例もありますからね・・・・・
彼女が幽霊になっているのなら白鳳の父親もあの世にいかずに魂のエネルギーとなってこの家の中に居着いているってことはありえますよ・・・・)
 
大輔(見てくださいこの表情・・・・
とっとと帰れって言いたそうな顔してますね・・・・・)
 
トゥルルルルルルル
 
康一・大輔(?)

大輔(でも、これで帰るわけにはいかなくなりましたね
白鳳の手がかりを探しているときにこいつは出ました・・・
これは、何かがあるって証明ですよ・・・・
この部屋に僕たちに見つけられては困る何かがあるってことです
その何かを見つけるまで、帰るわけには・・・・いきませんね・・・・)

大輔(あと、その電話には出ないでくださいね康一さん。)
 
そのとき、ひとりでに携帯電話の受話器が上がった。
 
ガチャッ

父親(早く電話に出んかッくそがきがッ!
ならしてんだぞ!)
 
康一・大輔(!!)
 
父親(このワシが帰れって言いたそうな顔してるだとォー?
逆だ!マヌケッ!
そのワシの顔はお前らをこの屋敷から絶対に帰さないといった決意だッ!
息子を追うものは必ず死んでもらう!)
 
康一(お前ッ自分の息子の犯罪を知っていたのかッ!)
 
父親(愛する息子は・・・・
ワシが守ってきた
幽霊となってワシは、魂のエネルギーでずっと守ってきた・・・)
 
大輔(幽霊・・・・・・)
 
康一(む、息子・・・・・!!)
 
父親(どうして、息子が弓と矢で、スタンド使いを作ってたか知ってるか?
ワシの息子はスタンドでワシを生き返らせようとしていたんだよっ!)
 
大輔(そんなことが・・・
あったんですか・・・・)
 
康一(でもそれとこれとは全く話が別ですよッ!
犯罪を許せるわけないだろ!
どこに隠れてるんだ⁉
姿を表せッ!お前ッ!)
 
大輔(康一さん、こいつは隠れていませんよ・・・・
すでに白鳳の父親は、現れていたらしいです・・・
最初から・・・・見てください・・・・この写真を・・・・)
 
ゴゴゴゴゴゴゴ

康一(何ーーーーー
こいつさっきと違うぞ!
いつの間にか受話器を持ってる!)
 
大輔(写真の中で動いているんです
こいつ、写真の中から電話してきていますよ・・・・)
 
父親(こーろーすー
お前らをー
こーろーすー)
 
康一(なんだとッ!お前ッ!
幽霊になった父親が写真の中にいるだってぇー!?)

ひとりでに携帯電話の受話器が飛んできた!
 
康一(この僕に、そんな手が通用するかーーッ!ストーン・ローゼスッ!)
 
スカッ
 
康一(え?)
 
バグワァッ
 
康一(うげっ)
 
父親(通用してるよーっ!?)
 
康一(何だ?なんで命中するんだ?
す、すげえコントロールしてるじゃないかーーーッ!)
 
大輔(ちがう、コントロールではありません
攻撃しているのは写真の中です・・・・
こいつは、写真の中で康一さん、あなたに受話器をぶつけたんです)
 
康一(しゃ、写真の中って
な、なんのことか分からないよーッ!)
 
大輔(!
やばい、包丁を出してますよ
こいつ、包丁を持っています)
 
康一(包丁・・・!?
包丁なんて、こっちにはどこにもないよっ?大輔くん!)
 
大輔(立ち上がってますよ!
写真からちょっと目を離すと動いています!
向かってきますよ・・・・・)
 
父親(こーろーすーゥーーッ!
ワシの愛する息子を追跡するものはこーろーすーゥーッ)
 
康一(逃げよう、大輔くん!)
 
ドンッ💥
 
康一(いてててっ
な、何だ?
まさかこの部屋ッ)
 
ガァーン
 
康一(こ、これは、壁だッ!
ここら先は空間に見えない壁があるよッ!
しかも、ぶっ壊れない!
この写真、まさか!)
 
父親(やっと気がついたのかねフフフ!
閉じ込められていることを・・・
お前らはもう外に出ることは出来ない・・・
その見えない壁は写真の枠だ!
お前らは、部屋の中にいるようで実は部屋の中にいるのではない・・・・
そのへやは、ワシの写真のなかなのだ!
ワシは写真の中にいきる幽霊!
ワシは、ワシの写っている写真のなかを支配できるのだ!
カメラを使って魂のエネルギーを閉じ込められるからなッ!)
 
父親(それが、ワシの能力だッ!
だから、その写真を傷つけることは、つまりッ!
お前たち自身の魂のエネルギーを傷付けダメージとなってお前たちに帰っていくのだッ!)
 
康一(写真の中!?)
 
父親(くくく、こーろーすーゥーッ)
 
康一(大輔くん何してるんですかッ?
包丁で切られそうなんですよー!!
リトル・ワールドで何とかしてよぉー!!)
 
大輔(康一さん、僕はもう諦めました・・・・
もう、その父親の攻撃を止めることは不可能ですね・・・・
その心霊写真へのダメージは全て僕たち自身に帰ってくるというのなら・・
リトル・ワールドで時を加速してもどうすることもできません
無駄なことは諦めますよ・・・・)
 
康一(何だって?大輔くん?
なに言ってるんだよーーッ!君はッ!)
 
バギバギ
 
スパアァァァン
 
父親(くくく、貴様らの首を・・・・切断したッ!死ねッ!)
 
🔪 スッ
 
康一(包丁だ、包丁だ、包丁が現れたぞ)
 
父親(お前らの首は・・・・吹っ飛んだ)
 
康一(うおおおおお
なにィーーーーーッ!?
包丁にさわれない!
受話器のときと一緒だ!)
 
康一(うおああ
突き刺さるゥーッ
だ・・・・大輔くんッ!)
 
大輔(父親を止めるのは諦めました・・・・
しかし
この写真から父親だけを引きずり出せば良いわけです康一さん。)
 
ポイッ
 
大輔(こいつが自分の写ってる世界を支配するというのなら・・・・
こいつだけもう一度カメラで撮って・・・
一人だけにすれば良いって・・・
そころですかね・・・・)
 
カラアアァン
 
父親(なにぃーーッ)
 
大輔(さてと、これからゆっくりと白鳳鳳作への手がかりを見つけるとしましょう・・・・
その前に康一さん、・・・・
こいつになにか決めの台詞を言ってください
バシッと!)
 
康一(お、お前なんか全然怖くなかったよ!
バーーーーカッ!)
 
しまったー全然子供みたいだったぞ?今の僕ッ!
 
大輔(じゃあ、こいつには逃げられないようにおとなしくしてもらいますよ。
この家の中に見られては困るものがある、だからこいつは攻撃してきた・・
ゆっくりと探させてもらいますよ・・)

父親(うおおおおお、あれがこいつらの手に渡ったら息子の居場所がばれてしまうー!
もう、息子を守れなくなるー!
チクショオーー!)

康一(テープでぐるぐる巻きにしてしかもその上から画鋲を指す。
こりゃあ逃げられないですね)
 
大輔(さて、探しましょうか康一さん)
 
・・・・・・・・・・・・・・・・
 
父親(た、頼むっ
そこにいるんじゃろ?康一とかいう子供よ
頼む、少しだけ隙間を開けてくれんかのー
い、息が出来ないんじゃ。
逃げはしない、少しでいいんじゃ
頼むッ!)
 
康一(少しだけですよ?)
 
ピリッ
 
父親(ありがとう
すまんのー
これでもう大丈夫じゃ)
 
バリバリバリバリッ
 
康一(え?)
 
タッタッタッタッ
 
父親(バカがッ、隙間があったらワシは逃げれるんじゃよお!
ワシに優しくしたのがおまえの、いや、お前らの敗因なんだよッ!)
 
大輔(こ、これは、日記ですか・・・
まさか、あいつが、証拠もなにも残さないと思っていたあいつが・・・・
こんな・・・・・)
 
パシイッ
 
父親(これをお前に見せるわけにはいかん!
これは、ワシが持っておく!
誰も息子を追わせはしないッ!)
 
大輔(な、なんでお前が、ここに?!
さっき、閉じ込めたはず・・・)
 
康一(ごめんなさーい!!
僕が、隙間を開けてしまいましたー!)
  
父親(そういうことじゃ、じゃあな)
 
スッ
 
父親(ワシの能力では、お前らを倒すことはできなかった。
だが、これがあれば、息子を追うことは出来なくなる!)
 
康一(く、くそー
僕のせいだ。
僕が、テープを破いたりしなかったら・・・・・)
 
大輔(いや、康一さん・・・・
やつの方が上手でした・・・
あの父親あって、息子ありといったところです・・・
あの、親子の決してあきらめない
生き延びようとする執念にやられたんです。
エステの時もそうでした・・・・・
僕たちは、白鳳鳳作の生き延びようとする執念で、土壇場で逃げられたんです。)
 
康一(で、でも・・・・)
 
大輔(それに、なにも収穫なしって訳ではありませんよ。
ほら、) ピラッ
 
康一(あ、それはまさかッ!)
 
大輔(あのノートの切れ端ですよ
あの父親は必ず息子の白鳳のところに知らせに行くでしょう。
でも、それはつまり、これをバックトゥザビューティーで治せば・・・・・)
 
康一(犯人に、やつに、たどり着くッ!)
 
大輔(その通りです。
もう逃がしません、最終決戦ですよ!)
 
 
to be continued