序章



ー『ラティアス航空H71便、間も無く搭乗を開始致します。ご搭乗のお客様は、14番ゲートからご搭乗願います。』ー

「皆からいっぱい貰ったわ...数え切れないくらい!」
私は別れの悲しさを掻き消すように満面の笑みでそう言った。
「たまには連絡してくださいね!」
「ユリーカ待ってる!!ね?デデンネ?」
「デェネネェ!」
シトロンとユリーカ、この兄妹はこれからもカロスに残る。寂しくなったらいつでも連絡出来るだろう。でも、彼は...。
「...サトシ!私、旅に出て本当に良かった...あなたは私の目標よ!次に会う時は、もっと魅力的な女性になってるんだから!!」
強がって、私はウィンクをしながらそう言った。シトロンとユリーカは意味を理解したらしく、顔を見合わせながら微笑んだ。この二人には、寂しくなったらいつでも連絡が取れるだろう。だけど...
ポケモンマスターになるための旅に暮らす彼には、やはり、連絡のしようが無いのだろう...。カロスでの旅ら終わったが、またすぐにマサラタウンから別の地方へと飛び出していくのだろう。だから、私の気持ちを分かるように伝えたつもりだったが、彼はエールの気持ちを込めたつもりであろろう、軽いガッツポーズを片手で取りながら。
「あぁ!!」
これである...全く、恋する乙女の心を分かって無いんだから...。...もう...。
やっぱり彼を落とすには相当な時間が掛かりそうだ。
「それじゃ!」
14番ゲートに行くために下りエスカレーターに乗る。
気配と足音で分かったが、彼はギリギリまで私を見送るためにエスカレーターの際に一歩踏み出したようだった。
それが私にありえない行動を取らせた。
私は、しばらくは会えないのだからと、未だに自分の気持ちを理解してない彼にお仕置きの意も込めて...私の覚悟を固めるため、羞恥を抑え込み、勇気を振り絞った。
「サトシ!最後に一つ良い?!」
エスカレーターの中間に差し掛かる手前になって私は振り向きそう言った。
後から考えたら、周りに人がいなくて良かったと思う、なにせ普通はしてはいけないこと、人前では出来ないことをするのだから。
私はエスカレーターを逆走した。頂上まで来て、やっと彼の顔が見れた。何が起こるか全く分かって無い、呆けていて、それでいて純粋で真っ直ぐな...彼らしい顔だ。
そして私は彼のーーに、ーーーーー。


目が醒めた。
そう、私は今、ポケモンコンテストに出場するためにホウエン地方へ向かう飛行機に乗っていた。
私はさっきの夢を思い出して頬を赤らめてしまった。自分でも分かるほどに。
「ついさっきの出来事なのに...サトシ...私のこと、忘れないでね...。」
そこまで呟いて、私は涙が溢れていることに気づいた。
ダメだ...覚悟を決めたところじゃ無い...。



ーホウエン地方...どんな所なんだろう。
私達は、それぞれの夢を叶えるためにカロスで別れた。彼は、こんな別れを何度も経験して来たのだろう。
彼は...やっぱり強いんだ...。私だって、負けてられない!
いつかまた、きっと会える、そう信じている。その時にはーー。


ーー今は、新たな旅立ちを喜ぼう。


【ポケットモンスター α&Ω】


ポケットモンスター、縮めて「ポケモン」。

これは、夢を叶えるために新たな旅に出た一人の少女の物語である...。


続く