第三話
「リボンを取り戻せ!!ホウエン地方で初ゲット!!」


ポケモンコンテストに挑戦するための旅の中、朝練に励んでいたセレナは、突如眼の前を通り過ぎた何かに、サトシから貰った大切なリボンを奪われてしまったのだった。

...朝だ。今までで一番最悪な朝だ。昨日のことを思い出すとまた泣き出しそうになる。
「セレナ。」
旅の仲間の唯一の男の子、タケシだ。私がベッドの上でうずくまっていたところに声をかける。
「大丈夫さ、きっと見つかるよ。大切なリボンだったんだって?」
タケシはハルカから私が彼とカロスを旅していたことを聞かされていた。だが、まだ私が彼のことを好いていることを知らない。
「セレナ、気を落とさないで!一緒に探そうよ!」
「...でも...、二人に迷惑かけちゃうことになるよ...。」
ハルカの言葉に泣き声で私は返す。
「それは違うぞ、俺たちは仲間じゃないか!」

ー『俺たちは仲間だ!仲間の悩みを聞くのは当然だろ?!』ー

彼の言葉が蘇った。あれは確か、私が今後のことで悩んでいた時だった。
そうだ、迷惑だなんて考えなくていいんだ。
「タケシ...ハルカ...。」
吹っ切れた表情だったのだろう、二人はしっかりと頷いてくれた。

まずは最後にあの何かを見失った所の周辺から探し始めることにした。そこにいると言うわけではないのだが、あの時は私自身とても焦っていたので見落としている手掛かりが有るかも知れなかったからだ。
「タケシ、何か見つかった?」
ハルカが少し離れて捜索しているタケシに声をかける。ハルカは私の隣で路地裏の手前を探索していた。タケシは私のポケモン達と一緒に奥の方を探索している。昨日はボールから出した状態でそのままあの時の何かを追いかけだしたのでみんなすぐに私に何があったのか気付いて心配してくれた。ボールに戻そうとしても、それを拒否してまで私のそばにいてくれた。今日もそう、みんな私のために手掛かりを探してくれている。頼もしいものだ。
「うーん、こっちは特に無しだなぁ。みんなはどうだ?」
その問い掛けは私のポケモン達に対して。
「ヤッチャ...。」
「フィァ...。」
ヤンチャムのニンフィアが答える。芳しくないと言う答えだった。しかし。
「...テナっ?!ルテナっ!!」
テールナーが何かを見つけたようだった。すぐさまテールナーのそばに駆け寄る。
「テールナー!何か見つかったの?」
「テナッ!テナテーナ!」
路地裏によくあるようなゴミ箱を指差してテールナーは私に何かを訴えた。何かある。
「この赤い毛は...ロコンの毛だ!」
タケシがゴミ箱の中に数本ある赤い毛を一本摘んでそう分析した。
「ロコン?」
私はポケモン図鑑を取り出して調べた。

『ロコン、きつねポケモン。産まれた時、尻尾は真っ白で一本しかない。育つと尻尾の先が別れて尻尾が増える。』

「だが、なんでロコンがこんな所に?」
タケシが疑問を混ぜて呟く。私はどういうことかと聞いた。
「ホウエンでは、ロコンは普通、野生ならおくりび山に群れを作って住んでいるんだ。トレーナーがいるのなら分かるが、この毛を見る限り、このロコンは野生だ。それに、ひどく荒れている。何かあったのかも...。」
毛を見ただけでここまで分かるとは、私は彼タケシの推理力に感心した。

『おい!暴れるんじゃぁねぇ!!大人しくしやがれってんだ!!』

壁の向こう側から荒っぽい声が聞こえ聞こえてきた。
「何かあったのかも!行ってみよう!」
ハルカが言って走り出した。当然私とタケシも気になったのでハルカに続いて走り出した。

「セレナ!あれ!」
壁の向こう側に着いたらそこは少し開けた空き地だった。そこには黒い服を着て、黒いニット帽を被り、黒のサングラスをかけた大男と、その足元にかなり毛並みの荒れたロコンが男を唸りながら睨みつけていた。男は私達に気付くなり、慌てたように怒鳴った。
「っ!お、おい!テメェらなにさっきから見てんだよ!!あっち行きやがれ!!」
だが、そんなことで引き退るような私達ではない。そんなことではトレーナーはつとまらないものだ。
ロコンはこちらに気付き、駆け寄って来て私の影に怯えたように隠れた。
「何してるの!この子嫌がってるじゃない!!」
「うっせぇ!!そのロコンを寄越せ!毛並みは荒いが、しっかりの手入れすりゃぁ高値で売れるんだ!!」
私の言葉に予想していた答えが飛んでくる。ポケモンバイヤー、カロスでもそんな輩がいた。あのバイヤーはビビヨン専門だったか、私達の手で、主に彼の力でやつは逮捕されたが...確か、ダズと言う名前だったか。
「くそぅ!こうなったら力づくだ!行けぇ!」
男がゴルバットを繰り出す。私はすかさずテールナーに声をかける。
「テールナー!お願い!」
「テナッ!!!」
気合いの入った返事だ。すぐにテールナーに指示を出す。
「テールナー!火炎放射!!」
「テーナッ!!」
お気に入りの枝の火をゴルバットに向かって放つ。
「避けろ!」
ゴルバットは男の声に合わせ火炎放射を避けた。
「喰らいやがれ!!ゴルバット、超音波!!」
テールナーを混乱させるつもりだ。
だけどそうはさせない!
「避けて!」
コンビネーションならこっちも負けてない。テールナーはすかさず反応して避けた。すると、ロコンが私に何かを訴えかけた。自分も戦いたいと言うのだ。
「分かったわ、ロコン!私に合わせてね!」
「コンっ!」
ロコンがテールナーと並んだ。二体は軽く目配せして身構えた。
「これでどう?!テールナー!目覚めるパワー!!」
「テナッ!ルテーナッ!!」
「コーンッ!!!」
テールナーの目覚めるパワーに合わせて、ロコンは大文字を打ち出した。
見事にシンクロした大文字と目覚めるパワーは、ズドォォン!!とゴルバットに直撃し、炸裂。ゴルバットは戦闘不能となった!
「くっ!!チキショウ!!覚えてやがれ!!!」
定番の捨て台詞を吐きながら男ら全速力で逃げて行った。

「ロコン、大丈夫だった?」
私はロコンに声をかける。その時。
「...あっ!」
見つけた!
ロコンの尻尾にリボンが絡まっていた!!すぐに取って確認する。
間違いない、彼から貰ったリボンだ!
バトルに夢中で全く気がつかなかった。
「セレナ!よかったかもぉ!見つかったわね!」
ハルカが私にそう言った。
「うん!良かった!本当に良かった!...本当に...。」
言いながら泣き出してしまった。
「良かったなセレナ!でも、そこまで大切なリボンだったんだなぁ。誰かから貰った物なのかい?」
今度の涙は昨日とは違う、しっかりと涙を拭って頷いた。
「あなたが持っていたのね。ロコン。」
しゃがんでそうロコンに言うと、当の本人も、リボンが尻尾に絡まっていたことに気付いてなかったようだった。あのバイヤーから慌てて逃げていたのでそれどころでは無かったのだろう。私が怒っていると勘違いしたロコンは尻尾を丸めて耳を垂れている。
「怒ってないわよ。ロコン、あなたとっても大変な目に遭ったのね。ほらっ、毛並みがこんなにひどくなっているわ!」
怒ってないことを伝えるために私はロコンの頭を撫でながらおどけたように言った。するとロコンは嬉しそうに尻尾を振り、膝に頬を摺り寄せてきた。
「そうだ!ねぇロコン、私達と一緒に旅をしない?私、あなたに力を貸して欲しいの!」
「コンッ!」
ロコンはその言葉に目を輝かせて返事してくれた。
「うん!...じゃぁ、行くわよ!ロコン!」
私はモンスターボールを取り出して上に放り投げた。ロコンはそれに合わせて跳び上がり、尻尾でボールを軽く叩く。

........ポンッ!

ロコンがボールに入った音。私はロコンをゲットした!
「じゃじゃーん!!私の旅の新たな1ページ...ロコン、ゲット!!!」
ホウエンでの初ゲットである。私はボールの中のロコンによろしくね!と言った。
「やったね!セレナ!」
「おめでとう!ホウエンでの初ゲットだな!」
ハルカとタケシが祝福の言葉をかけてくれた。私は二人を見て、満面の笑みで頷いた。
「えぇ!じゃぁ、まずはポケモンセンターに戻ってロコンのお手入れしなきゃ!」
私の発した言葉で私達は笑い出した。

ホウエンでの初ゲット、新たな仲間ができた。明日からまた旅の続き...彼に負けないように頑張らなくちゃ!!
私は彼から貰った大切なリボンを胸に結び、決意を新たに、彼にも続いているであろう視界いっぱいの空を見上げた。
時刻は夕方、淡い光が私達を優しく照らしていた。


続く