なんとまあ退屈なんだろうか。

毎日毎日、布団からたたき起こされ、眠い目を擦り朝ごはんを無理やり口に入れて、寝癖を直して制服を着る。

それから家を出て学校へ行き、意味のない数式や文法、価値のない争いや無駄話、その他を耳から耳へ受け流しながら家路に付き、夜ご飯を食べダラダラして布団に潜り1日が終わる。

そんな高校生活を送っている臨海高校2年、奥谷 将也は放課後の教室でため息をついた。

「レポート終わってねえよ、明日提出か...放課後終わらすしかねえかな」

辛うじて今日は座学が少なく、さほど気だるさは消え失せていたので元気はあった。

そんな奥谷を見つめて微笑んでいる少女がいた。奥谷と同じクラスの委員長、榊原 美夏。
彼女はいつも気だるそうな奥谷を見るのが好きだった、が、話しかけられずにもいた。
いつも話しかけようとしたらいない、目と鼻の先にいるのに話せない、そんな自分に嫌気もさしていた。

「はぁ、少しでもいいから話してみたい」
独り言を吐き出し、教室から出ようとしたその時、背中に声がぶつかった。

「なあ委員長、レポート用紙持ってねえか?
忘れちまってさ、はは」

突然の出来事にうろたえながら
「も、もってるよ!全部あ、あげる!」
そう言って美夏は半ば強引にレポート用紙を奥谷に投げつけ、蝉の声が響く廊下に駆け出した。

「いてっ、おっおい委員長!まじかよ、全部貰っちまったよ...」
ちょっとした罪悪感に苛まれながらも机に向かった。
「委員長、初めてしゃべりかけたけど意外に可愛いんだな」
そんなくだらないことを考えながらペンを走らせた。



下駄箱の前で思わず失神しそうになった、走ってるとき息をしていなかったからだ。
美夏は震えが止まるのを待って、どっとため息を、まるで二日酔いのサラリーマンの嘔吐のように出した。
「奥谷君が、私にしゃべりかけてきた」
美夏の頭の中にはそれしか無かった。
もう頭がパンクしそうだった、深呼吸をして一旦落ち着きながら靴を履き駐輪場まで歩いた。

「唐突すぎてわけわかんない...もう」
エイトビートを刻む胸を抑えながら自転車に腰掛けた。
まだ興奮は鳴り止まない。まるでパレードだ。

なんとか落ち着いて学校を後にした。
こんなにドキドキしたのは久々かもしれない、高1の時に好きなバンドのボーカルと握手して以来だ。

「ただいまー」
やっとのことで帰宅して、部屋のベッドに飛び込んだ。

「ちょっとあんた、うがい手洗いしたの?!」
部屋に入ってきた母の幸恵は、美夏の頭を小突いた。

「いたっ!するよもー!」
そんなどころではない、こころの奥でそうつぶやきながら渋々うがい手洗いをし、またベッドに吸い込まれていった。



「あー終わった終わった、もう手がダイヤモンドだ、いまなら片手ででボクシング世界チャンプにでもなれそうだな」
軽い冗談をつき、身支度をして、レポートの担当の先生の所へ行った。

「おせーよ将也、もう5時半だぞ、ったく早く終わらせとけよ」
レポート担当の田村先生は半切れ気味にそう言った。

「いや100ページはおわんないべ村の田んぼ」
冗談で誤魔化し、その場を小走りで後にした、後ろから聞こえる怒鳴り声は無視して。

学校からでると外は蒸し暑く薄暗く、蝉の鳴き声が雨のようにふりそそいでいた。
その雰囲気を楽しみながらチャリをこいでいた。はずだった。

突然頭が割るように痛くなりチャリから転げ落ちた奥谷、悶えながら助けをよぼうとするが声が出ない、朦朧とした意識の中、目の前に黒い影がおおいかぶさっきて、闇に意識が注がれていった。
続く。。