昼ごろ、作業を中断し休憩していると、コンコンと突然ドアをノックする音が聞こえる。
「あれー今日誰か来る予定だっけー?」とつぶやきながらカレンダーを確認していると、また、コンコンとドアを強めにノックする音が聞こえ、「はいはい、今出ますよー」と言いながら、ドアを開ける。そこには、20~25歳ぐらいの男性が立っている。
男性は、「すいません。ここが、紫音の研究所ですか?」と私に質問する。
私は「いかにも、ここが、研究所よ。って、言ってもあまり普通の一軒家とは変わらないけどね」と答え。「そうね。しいていえば、ライブハウスみたいな防音の部屋があるぐらいかしらね。」と付け加える。それを聞いた男性は「それはそれですごいな」と言い、「えーと、あの母親にここに今日行くように言われたのですが、なんなんですか?」とぶっきらぼうに質問する。私は「あー、息子さんが来るの今日だっけ、研究に夢中で忘れてた。ごめんね」と答えると彼は茫然しながら、「マジかよ」とつぶやく。それを無視し「まず、説明ね」と言い、部屋に入り、「えーと、確かこのへんに名刺が・・・あーあった。」とつぶやき、彼を室内に誘導し、ゴホンと軽く咳払いをし、彼に名刺を渡しながら「私は、紫音と言います。研究は、主に音についてしています。どういった研究なのかは防音室に入ってからね。」と微笑みながら言うと、彼は、名刺を受け取り、「どうも丁寧にありがとうございます。わかりました。それは、とりあえず、一旦置いておきます。ちなみに、うちの母親とどういった関係で?」と質問する。私は、微笑みながら「あなたの母親とは、結構前からの友人ね。色々研究に付き合ってもらってたの。それで、この前研究の相談の連絡をしたら、それなら、息子に行かせるって言ってたのよ。折角の機会だから、今日来てもらうことにしたの。行き詰まっていたから助かるわ。息子の飛巳くん」と答えると、彼は、「あーだから、なんかすっげぇ笑顔で言ってたのか。」と納得したように答える。
「そーゆうこと」と言い、続けざまに「早速だけど、研究に付き合ってくれるかしら?」と聞くと、彼は「わかりました。協力します」と仕方なそうに答える。それに対し、私は「ありがとう。助かるわ」と言い、続けざまに、「さて、防音室に案内するわ」と彼を、案内する。
 ~防音室にて~
「さて、ここが防音室よ」と言いながら、彼を室内に誘導する。
彼は、「まるで、スタジオだな」と驚きながら言う。「あら、ここは、スタジオも兼ねているのよ。撮影とかたまーにしたりするからね」と答えると彼は、納得したような顔をする。私は、そんな彼を見ながら「簡単に説明するわね」と言い、続けさまに「まず、私の研究は主に音って言ったよね?」と言いながら、彼を見ると頷く姿が見える。「音には色々種類があって、録音の方法だけでも沢山あるの。その中でも、私のメインは、バイノーラル録音についてなの。」と言い、コホンと軽く咳払いをし、続けて説明する。「まず、バイノーラル録音っていうのはね。簡単に説明すると、人間の耳にマイクを入れた状態で録音すると、再生すれば自然の音がそのまま聞ける。とされているの。ただ、人によって、聞き方が異なっているの。よく立体音響って聞くじゃない?」と質問すると、彼は「あー確かに、よく聞くな。」と彼は、答える。「そーいえば立体音響って具体的にはなんなんだ?」と質問する。
私は「立体音響は、ホールやライブ会場といったある特定の場所での音環境を立体的に再現することで、あたかも録音の現場にいるように、再生によって感じさせる。それを作りだすのが、バイノーラル録音が使われているの。大雑把に説明したけど理解した?」と質問すると、彼は「んーまぁーなんとなく?」と答える。それに対し私は「実際聞いた方がいいわね」という。彼にヘッドフォンとアイマスクを渡すと、「なんで、アイマスク?」と彼は質問する。それに対し、私は「その方が見えない分、よりリアルに聞こえるからよ」と答えながら準備する。カタカタとキーボードを鳴らしながら、PCを準備する。
 「おまたせ、準備できたわよ。鳴らす音は、雨音、花火・本をめくる音・ペンの音を鳴らすわね。では、ヘッドフォンとアイマスクをつけてね。もちろんアイマスクは見えないようにね。」と言い、続けざまに「じゃあ鳴らすわよ」と言い、音を鳴らす。
雨のザ―という音の途中で傘に当たる音に変わって響いている。音が止まり、次に花火の激しい音が何発も聞こえ、音が止まり、次に本を何枚もめくったり、一枚ずつめくる音が聞こえ、音が止まり、そのあとに、ペンで用紙に描いている音がボールペンだったり、万年筆の音などが耳元に木霊する。音が止み、気が付くと再生は終わっていた。
彼がヘッドフォンとアイマスクを外すのを確認してから、私は「終わったのに外さないから寝ちゃったかと思った。」というと、彼は「終わり言ってくれてもいいじゃん」とあくびしながら答える。私は「それはごめんね」と顔の前に手を持ってきて謝罪のポーズをする。
彼は「別にいいけど・・」と答え「それで、聞いたけど、どうしたらいい?」と質問する。
それに対し、私は「どんな感じに聞こえたかと、あとどんな音がバイノーラル録音に最適化かを答えてほしいの」とメモ帳を広げながら、答える。彼は「わかった。」と答える。
「まず、音の感想は、どの音もいい感じで、臨場感があって、実際、音が自分に迫ってくるような錯覚におちいる迫力があった。やっぱり言ってた通り、アイマスクをした方が、よりリアルで迫力があった。個人的には、雨と花火が好きだったかな。本とペンの音より、実際に雨と花火の音の中にいるって思ったから」と彼は頷きながら答える。
「次に、最適な音か・・・。あ、風の音とか、水の音とか?」と彼は言う。「それは、もうやってるね」と答える。それを聞くと彼は「あ、食べるのと飲む音は?それと乗り物系の音とか」と言う。「それは、咀嚼(そしゃく)だね。それはやってるけど、乗り物はあまりやっていないね。参考にするわ」と私は答える。彼は、「耳かき音とかどう?あと、普通の曲をそれで録音するの楽しいかも、あとバンドとか」と言う。それに対して私は「耳かき良いね。耳かき用に色々準備するから、録音する時は手伝ってね。普通の曲はやったことあるけど、バンド演奏とかはないね。せっかくだから、この部屋でライブしてもらって録音してみようか」とメモをとりながら言う。その姿を見た、彼は、呆れながら少し笑う。私は、ノートを閉じ、彼の方を向き「ありがとう。参考になったよ。これで研究も捗るわ」と微笑み、「でも、こんなこと付き合わせてごめんね」と言うと、彼は微笑みながら「いえ、自分も楽しかったので、よかったです。」と答える。私は「そう…改めてありがとう」と微笑みながら答える。


そろそろ時間遅くなってるけど君はどうする?
このまま帰る? それとも……..