最終回から二日後の午前。
サトシ11歳。
手持ちポケモン、
ピカチュウ。
カントー地方
名も無き村。





セン「そろそろ行こうかのう。」

センは、立ち上がる。

セン「おぬしも来るか?」

サトシ「何処へ?」

セン「村の神に毎日挨拶するのは、わしの仕事だ。」

サトシ「神...」

セン「仕度をしてくる。
  待っとれ。」

そう言って、センは、小屋に入っていった。
ピカチュウが小屋の裏からやってくる。

ピカチュウ「ピカッ!」

サトシ「あ!何処行ってたんだよ?!」

セン「どうした?」

小屋からセンが顔を出す。

セン「ピカチュウが戻ってきたのか。」

センは、もう一度小屋の中に入って、
直ぐにまた出てきた。

セン「仕度が出来た。行こう。」

センは、籠を背負って、
腰に切刃造りと瓢箪(ひょうたん)をくくりつけ、マントで隠していた。

サトシ「何処に行くんだ?」

セン「山の中にな。
  神を奉るところがあるんじゃ。」

センは、歩く。
サトシは、ついていった。

ピカチュウ「ピカッ!」

ピカチュウは、サトシの肩に乗る。
しばらくして、森の中に入っていく。

サトシ「セン。」

セン「何じゃ?」

サトシ「その籠は何?」

セン「?
  ついでに山菜でも摘もうと思ってのぉ。」

サトシ「へぇ~。」

ピカチュウ「ピカァ~~。」

サトシ「ん?
   どうしたんだ?ピカチュウ。」

ピカチュウが良く分からない鳴き声を出すので、
サトシは、不思議に思って、問う。
ピカチュウと付き合いの長いサトシは、
普段から阿吽の呼吸で、
ピカチュウがいつもと違う素振りを見せれば、
サトシは、違和感を覚える。
そして、その違和感は、無視してはいけないと、
サトシは、経験上、知っていた。
ピカチュウは、黙ってセンを見ていた。
サトシには、応えない。
ますます、不思議だった。
センの方を見てみる。

サトシ「セン?」

センは、ピカチュウを見て、立ち尽くしていた。
放心しているのかもしれないし、
もしくは、睨み付けているのかもしれない。
しかし、あいかわらず、マントのフードで、顔が隠れていて、
表情からは、読み取れない。
サトシは、今更ながら思った。
何故、センは、顔を隠しているのだろう?
そんなことを考えている間にも、
センは、未だに立ち尽くしたままだった。

サトシ「なぁ、セン?
   どうしたんだ?」

セン「あ、いや...」

センは、再び歩き出す。
サトシは、ついていこうとした。
すると、ピカチュウが肩から降りて、歩き出した。

サトシ「何だ、乗らないのか?」

ピカチュウ「ピカ。」

ピカチュウは、振り向き、首を縦に降る、
という動作を短く済まし、
センの後に続く。

サトシ「?」

サトシは、もう訳がわからなかった。
そして、しばらく歩いた。
かなり山の上の方まで来てる。
少し疲れてくる頃だ。

サトシ「セン、後、どれくらいだ?」

センは、振り向いた。

セン「ピカチュウが居ないな。」

サトシ「え?!マジで?!」

サトシは、足元を見る。

サトシ「ピカチュウー!何処だー!」

ピカチュウが居なくなっていた。
センが叫ぶ。

セン「おい!あそこに居ないか?!」

センが指を指す。
しかし、その方向に行くには、登山道を外れなければならない。
かなり急な斜面になっていて、危険である。

サトシ「くっ、行くか!」

少しためらいながらも、サトシはそう叫んだ。
しかし、そう言っている間に、
センは、すでに走り出していた。
体が弱いはずのセンがそんな行動に出るとは思っておらず、
驚くサトシ。

セン「うわぁ!」

センの声が響く。
足を滑らせたセンは、斜面を滑り落ちていく。

サトシ「セーン!!!」

センを追いかけようと、すぐさま行動に出るサトシ。
しかし、センの滑り落ちた斜面は、
サトシの目からも危険に見え、
安全な登山道に居た方が良いと判断したサトシは、
今通ってきた登山道を下って、センを追いかけた。
しかし、センは、何処までも滑り落ちていき、
速度を緩めることは無く、
あっという間に見えなくなってしまった。
そして、直ぐに、声も聞こえなくなる。
サトシは、力一杯、登山道を下っていたが、
次第に、慎重に下るようになる。
それでも、急ぐ気持ちは、変わらなかった。





センは、いつまでも滑り落ちて、
止まることが出来ないかのように見えるが、
実は、器用に斜面を、滑り台のように滑り降りていた。
センは、自ら滑り降りているのだ。
どんどん加速していく。
まるで、サトシから逃げるように。
そして、前方に目を凝らしている。
まるで、何処かにたどり着くのを待つかのように。
センは、素早く手を伸ばし、
ロープを掴んだ。
ロープは、二本の木にくくりつけられ、
ピンと張っていた。
それによって、センは、止まる。
すると、すぐさま、センは、
背負っていた籠を地面に置き、
中からピカチュウを摘まみだし、
睨み付ける。

ピカチュウ「ピーカー...」

センの圧に怯むピカチュウ。

ニャース「ニャるほどニャ。
    このロープは、そういう用途だったのニャ。」

ニャースが現れた。