001 「忍と雨」

暦「今日は雨か。どうも最近は雨が嫌いなんだよな」

忍「そりゃそうじゃろう、吸血鬼なんじゃからの」

暦「吸血鬼は雨って苦手なのか?」

忍「雨と言うか、流れのある水じゃな。吸血鬼が海や川を渡れないのは有名じゃろう」

暦「そうなのか。じゃあ雨が嫌いになったのも吸血鬼化の影響ってことか」

忍「じゃろうな。どうにかなると言う訳ではないが、嫌悪感レベルの影響はあるんじゃろうよ」

暦「僕は海に行きたいと思うけど」

忍「嫌悪感に勝る煩悩があるからじゃろ」

暦「なるほど!」

忍「納得するでない」

暦「その理屈なら、雨も好きになるような目的があればいい訳だ」

忍「そう簡単なものとは思えんが。皆がお前様のように単純ではあるまい」

暦「忍、今度から雨の日は必ずミスドに行くことにしよう」

忍「しのぶ、雨大好き!」


002 「台風と神原」

暦「日本列島、台風直撃か。今日は家で読書だな」

駿河「おはよう、阿良々木先輩。今日も良い日だな!」

暦「たった今、良い日じゃなくなったよ」

駿河「敬愛する阿良々木先輩の元気がないとは。私がひと肌脱ごう!」

暦「お前が脱ごうとしているのは服だ!それ以上脱ぐなら追い出すぞ!」

駿河「そうか、私の貧相な肉体では阿良々木先輩を満足させられないか。羽川先輩を連れてこよう」

暦「どこからともなく戦場ヶ原が来るパターンだろ、それ。余計なことをするんじゃない。で、こんな天気の中、なんの用だ?」

駿河「暇だから遊びに来たのだ」

暦「お前は敬愛する先輩の家にアポなしで訪問するのか」

駿河「私の先輩はそんな狭量ではないからな」

暦「お前のそれは敬愛ではなく盲信だよ」

駿河「皆にもちょっと猛進だと言われるな」

暦「ちょっと、じゃなくて猪突だ。都合の良い耳をし過ぎだろう」

駿河「私は阿良々木先輩の都合の良い女でありたい」

暦「分かった、悪いのは耳でなく頭だな」

駿河「これでも教養をつけるべく読書を趣味にしているのだがな」

暦「頭の良し悪しは読書に影響されないと証明されたな」

駿河「BL本だが」

暦「有害図書肯定派に寝返りそうだよ」

駿河「ははは、だが安心してほしい。今日持ってきたのはBL本ではないからな」

暦「本日初の良い知らせだ。今日は本を読みに来たのか」

駿河「うむ。今日は阿良々木先輩と一緒に読書できればと思ってな」

暦「まあ、いいけどさ。変なことをしたら出てってもらうからな」

神原「ふふ、戦場ヶ原先輩のツンデレ属性が移っているぞ、阿良々木先輩」

暦「・・・もういい。で、何を持ってきたんだ?」

神原「官能小説だ」

暦「出て行け」


003 「木枯らしと八九寺」

暦「お、あそこに見えるは八九寺じゃないか。ちょっと揉んで行こう」

真宵「・・・木枯らし吹く季節、寒さを感じない私でも冬の訪れを感じますねえ」

暦「じゃあ僕が暖めてやるよおおお!」

真宵「ひっ!?」

暦「八九寺のちっさな体を僕の体で包んでやるぞおおお!」

真宵「ぎゃー!?」

暦「特に血液ポンプの心臓があるここは念入りに揉んでやらあああ!」

真宵「ぎえええ!?」

暦「肌と肌の触れ合い、つまり脱げえええ!」

真宵「いやあああ!?」

暦「くそ、抵抗するなら僕が先に脱ぐぞおおお!」

真宵「うらーー!」

暦「ぎゃあああ!?」

真宵「はあはあ・・・リュックに入れていたバールのようなモノが役に立ちました。さて、変質者に止めを刺さないと」

暦「待て待て、僕だ阿良々木だ、変質者じゃなく、お前の想い人だぞ」

真宵「カピバラさん!?」

暦「それは動物園で人気の齧歯類だ。僕の名前は阿良々木だ」

真宵「失礼、噛みました。齧歯類だけに」

暦「可愛いからドヤ顔はやめろ。それにわざとだ」

真宵「失礼、噛みまみた」

暦「わざとじゃない・・・だと・・・?」

真宵「ファンに媚を売る姿勢を見下しました」

暦「僕とカピバラを同時に馬鹿にするな!」

真宵「影では阿良々木って呼んでます」

暦「呼び捨てー!?」

真宵「暦」

暦「・・・それは恋人みたいでありだな」

真宵「阿良々木さん、いきなり抱きつくのはやめてください。幽霊の私でも驚くんですよ?」

暦「HAHAHA」

真宵「誤魔化さないでください」

暦「八九寺は何をしてたんだ?」

真宵「誤魔化すこと自体は誤魔化しませんね・・・。特に何もしていません。木枯らしを感じながら散歩していただけですよ」

暦「木枯らしか。よく聞くけど、いまいち定義が分からないな」

真宵「秋の終わりから初冬にかけて吹く北風を木枯らしというんですよ。これが吹くと冬って感じがしますね」

暦「確かにな。さっきから風が冷たいと思っていたけど、これが木枯らしか」

真宵「木枯らし吹く中、どちらにお出かけですか?」

暦「寒いから家の炬燵を出そうと思ったんだけど、延長コードが壊れていてな。買い物だよ」

真宵「炬燵を出すために寒い思いをして出掛けるとは本末転倒ですね」

暦「暇だったからな。炬燵用の蜜柑と本も買う予定だ」

真宵「そこに猫がいれば完璧ですね。それとも、羽川さんを連れ込む気でしょうか」

暦「良い考えだな。僕が戦場ヶ原に殺されると言う点に目を瞑ればだが」

真宵「なら、周りから見えない私なら問題ないのでは?」

暦「お前が僕の家に来たがるなんて珍しいな。結婚する?」

真宵「お断りします。ただ、寒さを感じない私でも冬の物悲しさは感じるんですよ」

暦「・・・なら、二人で観れるようにDVDでも借りて行こうか」

真宵「ありがとうございます、阿良々木さん!」

暦「じゃあ、寒くないように手を繋ごうぜ」

真宵「えへへ、お言葉に甘えますねっ」

暦(幽霊って睡眠薬とか効くのかな)


004 「春一番と羽川」

暦「よう、羽川」

翼「阿良々木君、こんにちは」

暦「公園で何してるんだ?」

翼「春一番が吹いていたから、春を感じながら散歩でもしようかと思って。阿良々木君は何をしていたの?」

暦「僕も暇潰しの散歩だよ。なあ羽川、春一番の定義って何なんだ?」

翼「立春から春分までに初めて吹く強い南風のことだよ。春二番、三番もあるね」

暦「風には色々名前があるよな。春風とか、木枯らしとか。正直、覚えきる気がしないよ」

翼「日本語の良いところでもあるけどね。学校で習うものだと、季節風、偏西風、貿易風、極東風とか。知名度が高いのは六甲颪とかもあるよね」

暦「六甲颪っていうと、野球の歌に出てくるあれか?風の名前だったのか」

翼「知らなかった?六甲颪は冬に六甲山から吹き降ろす風のことなんだよ」

暦「へえー、羽川は何でも知ってるな」

翼「何でもは知らないよ。知ってることだけ」

暦「はは、久しぶりに聞いた気がするな、その台詞」

翼「もう、阿良々木君が言わせたんじゃない。何度も言うのは恥ずかしいんだからね」

暦「それは悪かった。ところで、羽川は春が好きなのか?」

翼「うーん、春が好きというか、寒いのが苦手かも。かといって暑すぎるのも好きじゃないな」

暦「まあ、羽川は猫属性だからな。その辺りも猫に準じるんだろう」

翼「関係あるのかな。なら阿良々木君の場合は日差しの強い夏は苦手ってこと?」

暦「確かに強過ぎる日差しは嫌だけど、これは吸血鬼属性というよりも一般論じゃないか?」

翼「最もだね。それに阿良々木は十字架もニンニクも平気なんでしょう?」

暦「いや、実は苦手なんだ。無意識レベルだから、直接的な害は無いんだけどな」

翼「へえ。じゃあ、魅了効果も持っていたりして」

暦「それがあればもっと友達がいると思うんだけどなあ」

翼「あれ、阿良々木君が友達を作らないのは人間強度が」

暦「それ以上はいけない」

羽川「・・・えっと、じゃあ阿良々木は冬が好きなんだね・・・きゃっ!」

暦(強い南風により羽川のスカートが捲り上がり、中身が露出する。春二番、グッジョブ)

翼「・・・見えた?」

暦「安心してくれ、まったく見えていない。ただ、気付いたことがひとつある」

翼「本当かなあ。・・・気付いたって何を?」

暦「僕も、春が好きだな」


005 「雪と千石」

暦「いらっしゃい、千石。寒くなかったか?」

撫子「お、お邪魔します。ちょっと寒かったけど、大丈夫だよ、暦お兄ちゃん」

暦「今朝起きて寒いと思って外を見たら、雪だもんな。千石が僕の家まで来れるか心配だったよ」

撫子「積もってるけど5cmくらいだし、お兄ちゃんの家に行くならブリザードでも平気だよ」

暦「そ、そうか。とりあえず僕の部屋に行こうか。炬燵を出したから入るといい」

撫子「あ、本当だ。撫子の家は炬燵無いから、珍しいな」

暦「へえ、それも珍しい気がするな。寒くないのか?」

撫子「うん、床暖房があるからすごく暖かいんだ。だから、冬でも家だと薄着だから、室内で厚着は落ち着かないなあ。ちょっと脱いで良いかな?」

暦「家でも薄着じゃあ仕方ないな。でも体が温まってからにしろよ?」

撫子「えへへ、分かったよ暦お兄ちゃん。あ、部屋の鍵閉めても良い?家でも閉めてるから、落ち着かなくって」

暦「家でも閉めてるなら仕方ないな。まあ、飲み物持ってくるから、その後にしろよ」

撫子「ありがとう、お兄ちゃん。炬燵に入ってるね」

撫子「・・・・・・」

撫子「今のうちに脱いでおこうっと」

撫子「脱いだのは鞄に入れて・・・っと」

撫子「・・・っくしゅん。うー寒いなあ。でも我慢、我慢」

撫子「・・・・・・」

暦「お待たせ。あれ、結局脱いでないじゃないか。やっぱり炬燵だけだと寒いか?」

撫子「えへへ、お飲み物頂いたらきっと温まるよ」

暦「そうだな。ほれ、珈琲。砂糖ミルクは好みで入れてくれ」

撫子「ありがとう。あ、鍵は閉めてもらっていい?」

暦「ああ、そうだったな。と言っても、今日は僕以外いないんだけどな(千石の部屋に鍵なんてあったかな?)」

撫子「はあー生き返るなあ。・・・あ、暑くなったなー。これはもう脱ぐしかないなー」

暦「早いな。自由にしていいぞ」

撫子「うん、端っこに置いておくね」

暦(カーディガンの下は薄手のシャツか・・・って白いから透けちゃってるよ。しかも、キャミソールの中に下着を着けていないぞ。千石、ちょっと無防備すぎないか?)

撫子「あ、あーやっぱりこの方が落ち着くなあ(さっきまで着けてたから胸がスースーする)」

暦「千石は意外とラフなんだな(流石に直接注意はなあ。火燐ちゃん・・・はないか、月火ちゃんに相談しよう)」

撫子「う、うん、暦お兄ちゃんの前だと不思議とリラックスしちゃうのかも」

暦「うーん、喜ぶべきか」

撫子「喜んでいいよ。むしろ喜ぶべきだよ」

暦「はは、そうだな。ところで、今日は何しようか。急だったから遊ぶ準備もできていなくてな」

撫子「えと、今日はお兄ちゃんとジェンガをやろうと思って持ってきたんだ」

暦「懐かしいな。ん?ブロックに何か書いてある・・・『プレイヤー1にマッサージ』。もしかして、罰ゲームジェンガか?」

撫子「あれー、撫子、気付かなかったなー。でも、折角だからやりたいなー」

暦「ああ、むしろ面白そうじゃないか。倒した人が最後に持っていたブロックの罰ゲームを受ければいいんだな」

撫子「うん、じゃあスタート!」

―――
――
― 

撫子「あ、倒しちゃった」

暦「はっは、僕の勝ちだな。さて、お待ちかねの罰ゲームは何だ?」

撫子「えっと、『ハグ10秒』」

暦「えっ?」

撫子「ハグだよ、暦お兄ちゃん」

暦「そんなのもあるのか。うーん、でも千石は女の子だし、嫌なのはパスでもいいぞ?」

撫子「でも、罰ゲームだから仕方ないよね。それに撫子嫌じゃないよ?・・・でもお兄ちゃんは撫子なんかとハグなんかしたくない、かな」

暦「いやいやそんな訳ないだろ」

撫子「じゃあ問題ないね。私から行くね。・・っえい!」

暦「うおっと」

撫子「じゅ~う、きゅ~う」

暦「(がっつり胸が当たってるが、千石は気にしないタイプなのか?)」

撫子「・・・ぜろ。えへへ、冬だと暖かいから良いかも。じゃ次に行こう」

暦「(その後、ほとんどが千石の負けで進んだ。『全身マッサージ』、『後ろからハグ』、『服を脱ぐ』、『ポッキーゲーム』、『頬ずり』など、運悪く際どい内容が多かった)」

暦「千石はジェンガが苦手だな。罰ゲームばかりじゃないか」

撫子「うーん、撫子は不器用だから。でも、罰ゲームはドンと故意だよ」

暦「ドンと来いとは、大きく出たな。・・・お、もうこんな時間か。門限あるだろ?家まで送っていくよ」

撫子「うん、名残惜しいけど仕方ないね」

暦「また雪が降ってるな。千石、僕のマフラー貸してやるよ」

撫子「・・・えへへ、ありがとう、暦お兄ちゃん」

忍(・・・ラスボスじゃの)


006「木漏れ日と戦場ヶ原」

暦「おはよう、戦場ヶ原。待たせたか?」

ひたぎ「彼女よりも遅く到着しておいて、気安い挨拶とは良いご身分ね阿良々木君おはよう」

暦「おはようの前に付ける言葉が辛辣過ぎる!」

ひたぎ「今日は良い天気ね、おはよう」

暦「取って付けるとはこのことだな。それに、まだ待ち合わせの10分前じゃないか」

ひたぎ「私は1時間以上前からここに居たわよ」

暦「ここはお前の家だ。叙述トリックで自分を優位にするのはやめてくれ」

ひたぎ「前置きはこのぐらいでいいでしょう。今日はお話ではなく、お出掛けの予定よ」

暦「・・・ここは納得しておこう。で、どこに出掛けるんだ?」

ひたぎ「今日のデートは森林浴よ」

暦「へえ、良さそうだな。今日は快晴だし、暑過ぎず寒過ぎずで過ごし易いし」

ひたぎ「行き先は北白蛇神社」

暦「そこなら僕は何度も行っているから迷う心配もないな」

ひたぎ「私以外の女とね」

暦「悪意のある言い方をするな。それに、あそこには用事でしか行ったことがないんだ」

ひたぎ「ええ、知っているわ。だから、デートで良い思い出に塗り替えるのが目的なのよ」

暦「戦場ヶ原・・・」

ひたぎ「思い付きを言ってみたのだけれど」

暦「台無しだよ!」

―――
――


ひたぎ「阿良々木君の自転車に乗るのも久しぶりだったわね」

暦「お前を初めて乗せた自転車じゃないけどな」

ひたぎ「大丈夫。そのうち、阿良々木君に跨る日が来るわよ」

暦「反応しにくいボケはやめてくれ。さ、ここからは徒歩だぞ。戦場ヶ原は北白蛇神社に来たことあるのか?」

ひたぎ「いいえ、初めてよ。阿良々木君について行けるか心配ね」

暦「山登りってほどの急勾配はないよ。戦場ヶ原はランニングしてるから体力もあるし」

ひたぎ「さて、引っ張ってくれるかしら」

暦「おいこら。スタートから降参するな」

ひたぎ「鈍いわね。手を繋いでと言っているのよ」

暦「・・・喜んで」

ひたぎ「ん」

暦「さ、行こうか」

ひたぎ「ええ」

暦「・・・・・・」

ひたぎ「・・・・・・」

暦「草木のトンネルって感じで気分が良いな」

ひたぎ「ええ。ここでお手製のおにぎりでも食べたら最高だと思わない?」

暦「それは名案だな」

ひたぎ「・・・・・・」

暦「・・・・・・」

ひたぎ「・・・ないの?」

暦「こっちの台詞だよ!」

ひたぎ「なぜ私が作ってくることを前提にしているのか理解に苦しむわ」

暦「目の前に居る彼女から『お腹を空かせてきなさい』と命令されてきたからな!」

ひたぎ「それは嫌がらせよ」

暦「効果覿面だよ!」

ひたぎ「仕方ないわね、ひたぎちゃん手作りサンドウィッチでよければ食べていいわ」

暦「そうきたか・・・」

ひたぎ「おにぎりもあるわよ」

暦「最高の彼女だった」

ひたぎ「油淋鶏もあります」

暦「そこは唐揚げじゃないんだ。いや、美味いけどな、ユーリンチー」

ひたぎ「和洋中で揃えてみました」

暦「至れり尽くせりだな。あ、レジャーシートは持ってきたぜ」

ひたぎ「やるじゃない。あそこに見える大きな木の下に行きましょう」

暦「お、木漏れ日が良い感じで気持ち良さそうだな。でも頂上じゃなくていいのか?」

ひたぎ「あまり良い思い出はないでしょう?」

暦「・・・ありがとう、戦場ヶ原」

―――
――


暦「満腹だ」

ひたぎ「お粗末様。でもよく完食したわね。残したところを責める予定だったのだけれど」

暦「愛する彼女の手作りじゃなかったら食べ切れなかったかもな」

ひたぎ「・・・・・・」

暦「・・・もしかして照れてるのか?」

ひたぎ「いいえ、嬉しかっただけ。ありがとう、阿良々木君。私も愛してるわ」

暦「・・・まったく、お前には敵わないな」

ひたぎ「良い思い出に塗り替えられたかしら?」

暦「思い付きでも、ここが好きな場所になったよ」

ひたぎ「思い付いたのは2週間前だけどね。さ、頂上で御参りもしましょう」

暦「え?あ、待てよ戦場ヶ原!」