俺がいつものように家に帰ると家の中は夕闇に照らされ静まり返っていた。

八幡「小町はまだか」

最近、小町は受験勉強をするために友達とファミレスやら図書館やらに行っているため帰りが遅くなることはそう珍しくない。
兄としては自分と同じ学校に入るために一生懸命頑張っている妹を見るのはとても嬉しいことなので邪魔をしないように心掛けている。

八幡「今夜も晩御飯のためにレンジに働いてもらうか」

小町の帰りは分からずご飯を作っても冷めてしまうためここ数日はコンビニで買ってきた
「ラクラク5分で出来上がり!」などといった温めるだけの食べ物で晩御飯を済ませることも多々あるのだ。
ごめんよ、レンジ。こんな遅い時間まで働いてもらって。そう感謝をすると同時に生まれ変わったら家電用品にはなりたくないと切に願う自分がいるのだった。

八幡「ごちそうさん」

俺は晩飯を食べた後、特にすることもなくいつもの如く適当にテレビをつけ、カマクラ相手に炬燵でほんわかタイムを満喫していた。

特に考えることもなくぼーっと寝転がっているとふと今日のことがよみがえってくる。

八幡「今日のあいつらの様子、どこかおかしかったよな」

あいつらとはもちろん雪ノ下と由比ヶ浜のことだ。
一色が俺を旅行に誘った時に見せたあの表情はなんだったのだろうか。

確かに、一色があんなに真剣な表情するのは初めて見たし、最初は俺もびっくりしたけどあの2人の表情はそれとは違う何かを感じた。
どこか哀しいような、そんな印象を与えるものだった。

八幡「あ、もしかしてあいつら・・・」

俺は考えた末、1つの結論に至る。

八幡「あいつらも一色とラスベガス、行きたかったのか」

確かに最初あった時よりはクリスマスイベントを経て少し仲良くなっていると思っていたけど、そういうことだったのか。
だから俺がOKしたとき何か言いたげな様子だったんだ。

そういう事なら言ってくれればどうにか一色を説得して譲れたかもしれないのに。でも、たしかペアチケットだったはず。
ということは当たった本人の一色は行くとしてどちらにせよどっちか1人しか行けないよな・・・

八幡「メールでも送って聞いてみるか」

俺は2人がどう思っているかを聞くためメールの本文を打ち始める。

八幡「もしお前らが旅行に行きたいなら、俺はいいから2人で話し合ってくれ。送信っと」

はぁーっと俺はため息をつく。なんか今日は疲れた、早く寝よう。俺は風呂に入り、ベッドに横になるとすぐに眠りに堕ちていくのだった。

翌朝・・・
今日は土曜日だが誤って毎日に設定してしまった携帯のアラームが鳴り目が覚める。
アラームを止めようと携帯の画面を見てみると1通のメールが来ているのに気付く。雪ノ下からだ。
「一色さんが誘ったのは比企谷君だし、ペアチケットは比企谷君と一色さんの2人で行くべきだと思うわ」
そうメールには短く書かれてあった。
実に雪ノ下らしいメールだ。必要事項だけを記し、無駄な部分は全くない。事務連絡かよ、俺はそう思い「了解」とだけ返信して再び寝るのだった。

それからというもの部室には依頼者もほとんど無く淡々と同じような毎日が過ぎ、旅行当日の朝を迎えた。

俺は、朝6時に起きて朝食を済ませ身支度が整うとまだ寝ぼけている小町に「それじゃあ行ってくる」とだけ言って家を出る。

冬のため外は冷え込みまだほんのりと薄暗い。俺はポケットに手を突っ込み少し早足気味で道を歩き、
一色との待ち合わせ場所である千葉駅に向かおうためモノレールに乗り込む。

八幡「6時45分、まだ15分あるな。」

俺は少し早めに着き、あたりを見回すがまだ一色の姿は見当たらない。俺は風の当たらない建物のかげで待つことにした。

7時10分頃・・・

八幡「何やってんだ、あいつ」

俺は待ち合わせを過ぎても姿を見せない一色を待っていると、後ろから肩をポンッとたたかれる。

いろは「せーんぱい、待ちましたか?」


八幡「あーちょー待ったわ、おせーよいっしk」

俺は一色にそう言いながら後ろを振り返り、思わず息をのむ。
だって、その光景は異様で意外なものだったから。

八幡「何でお前らもいるんだよ・・・」

そう、一色の隣にいるのはこの間俺に旅行を譲った紛れもない雪ノ下と由比ヶ浜だった。